Amazonの広告、特にAmazon内での検索連動広告の『Amazonスポンサー広告』はブランドの成長を促せるプロダクトです。『Amazonの検索はbuy検索』『売上まで計測ができる』という点から売上貢献度が高く、重要な広告メニューとして取り組んでいる広告主も多いと思います。弊社はAmazon広告の運用を専門としており、ありがたいことにご支援しているクライアントからご評価をいただき、5年以上継続して広告運用を担当しております。
この5年で、世情は大きく変わりよりECの可能性が広がり、よりAmazonの重要性が高まったことを感じており、それに伴い各広告代理店もAmazon広告を支援する部署や専門の企業も増えています。支援会社が増えたことで広告主から見たら選択肢が増えたというポジティブな点がある反面、実力が不足しているや自社とマッチしないパートナーを選択する可能性も増えてきました。
上記のことから、Amazonへの出稿をやめ、ブランド成長の可能性を閉ざしてしまうことがあります。今回は、Amazon広告に対しての広告主のお悩みとその原因をご紹介していきたいと思います。
目次:Amazon広告のお悩み7選
1.代理店担当者のコミュニケーション力が低い
2.代理店の担当者のAmazonへの知識レベルが低くレスが遅い
3.広告のROASは上がっているのにAmazon全体売上が上がっていない
4.ビッグセールでの運用が正しいかわからない
5.スポンサーブランドの効率が悪すぎる
1.代理店担当者のコミュニケーション力が低い
広告代理店の担当者からの提案や報告を受け、「なんか会話がかみ合わない」「視点が違う」「提案や報告に納得できない」などと感じることはありませんでしょうか?Amazon広告でもよくあり得る悩みの一つです。原因は「現パートナーが自社ブランドとのアンマッチ」という点につきます。
❶自社ブランドとパートナー企業のアンマッチ
❷パートナー企業の担当者のアンマッチ
まず考えるのは、❶自社ブランドとパートナー企業のアンマッチです。
詳細は【ブランドマネージャー向け】広告代理店からのAmazon広告の提案にマーケティング視点はあるか? にて述べておりますが、自社ブランドとパートナーの得意領域がずれているとみている視点が異なり、共通言語での会話ができず、全体のブランドコミュニケーションからAmazonだけ分断した運用になってしまいます。以下の図で各代理店の得意領域を可視化しております。
「TVやPRなども含めたブランドのトータルコミュニケーションの一つにAmazonを組み込む」という大手ブランドの場合、「Amazon専門代理店」を選択すると視野や視座にギャップが生まれます。特にブランドマネージャーとの会話に齟齬が生まれる可能性が高いです。
反面、Amazonのみを主戦場としている中小規模のブランドの場合、「Amazonに特化」した知識を持っていて「スピードが速く」「全体のブランドコミュニケーションが存在しない」フェーズであれば、専業代理店がマッチする可能性があります。自社ブランドの規模やフェーズと代理店の得意領域を理解することで、パートナー企業のアンマッチについて可能性が低くなる可能性があります。
次に❷パートナー企業の担当者のアンマッチですが、これはシンプルで「担当者がどこを見ているか?」に限ります。
上記のとおり、見ている視点=「目的」がずれると、それ以下の項目もずれていき、「なんか会話があわない」という事態に陥ります。この場合、一度「広告出稿の目的」を明確にすり合わせ、「その目的を達成するために適したKPIやプラン」の提案を依頼することで納得した共通言語が生まれ、視点が定まることでコミュニケーションのギャップが埋まるでしょう。
2.代理店担当者のAmazonに対する知識レベルが低く、レスが遅い
広告代理店では、「営業=フロント」「運用」「分析&レポート」と分業制が進んでいるケースが多くみられます。あなたとコミュニケーションをとるのは営業となりますが、分業されている場合、営業は広告の運用状況や設定状況、最悪な場合現在の数値状況さえ理解していないケースが見られます。その場合、「これはどうなっている」と質問すると「確認します」→運用担当に確認という流れになります。要するに営業は何もわからないので社内の別担当に確認する必要があり、そのためスピードが遅くなるという事態を生み出しているのです。
もちろん「運用」担当が一緒にコミュニケーションの場に出てくることもありますが、「運用」担当はあくまでAmazon広告の運用担当なので、視点がかなり狭いです。フロントとなる営業がAmazonに対して知識が低いことで、すべてのコミュニケーションのスピードが落ち、ブランド成長を阻害してしまうでしょう。
フロントである営業の担当者については、「広告の設定ができる」「運用ができる」もしくはマーケティングの知識があり「設定」「運用」が可能な担当者をサブにつける、などパートナーに依頼したほうがいいでしょう。
すでにパートナー企業がいて、営業に対して疑問をお持ちでしたら「広告の設定ができるか?」「運用ができるか?」を確認しましょう。設定や運用ができることで、どのようにAmazonは挙動するのか?が理解でき、アカウント構成の精度があがります。
次に、「自動入札ツール」に頼りっきりになることで、営業、運用担当ともども圧倒的に知識不足になる可能性があります。たしかに、自動入札ツールは広告のROASを改善するという点では優秀です。ただ、「なぜ改善されたのか?」の理由についてブラックボックスになるため、「AIがそう判断したから」としか理解できないです。さらに「打ち手」「設定&入札」だけでなく「Amazon内の挙動」「競合」に対してのアンテナも鈍り、「Amazon内のさらに広告だけ」を「広告の数値だけ見てROASが適正化される」という状況になるため、大きくAmazon売上を伸ばすという点では必ずしも最適解とは言えないと考えております。
運用については自動入札ツールを使うことがいいのか?それともプロフェッショナルによる手動入札がいいのか?については一概に言えないですが、こと「ブランド成長のためのAmazon内継続成長」のためには、現時点ではプロフェッショナルによる手動入札運用がベストと私は考えております。
3.ROASが上がっているのにAmazon全体売上が上がっていない
Amazon広告では費用対効果を表すROASの指標をもとに、設計、運用されるケースがほとんどです。ただ、Amazonの売上は「広告経由ではなくオーガニック経由」での売上もあり、大手のブランドや認知率の高いブランドはとくにその割合が大きいです。つまり、広告経由の売上を最適化=ROASの最大化がAmazon内のブランド売上最大化とイコールにはならないというわけです。以下の図は横がAmazon全体の売上、縦が広告のROAS、バブルの大きさが広告費を表してます。
この図を見るとわかりやすいですが、ROAS最大化=Amazonの売上最大化ではないということがわかります。単純に「予算に対してROASを最大化します!」ではなく、「予算に対してAmazon全体売上を上げるため指標」という視点での提案と根拠は担当者から提案されていますか?この点がないパートナーの場合、Amazon広告の有効活用は難しいでしょう。
もしその場合は、「広告売上ではなく、Amazon全体売上を最大化する指標とその根拠を提案してほしい」と伝えてみてください。そこで納得ができる提案がない場合は、代理店の担当者の変更、さらには代理店自体の変更も視野に入れたほうがいいかもしれません。
目的は必ずAmazon売上で、広告はその手段に過ぎない、その手段の精度を上げるにはどのようなアカウント構成やKPI設定、運用を行うべきか?を絶えず考える担当者にあたった方は大きな成果を得る可能性があるでしょう。
特に専業代理店であるのが細かいKPIを立てて、そのKPIに沿って運用していくという方法です。もちろんある側面では有効な方法ですが、大手ブランドは「広告よりオーガニックの売上割合が大きい」ケースが多いです。Amazonスポンサー広告は直接的な売上につながらなくても、「オーガニック」への好影響やMA(レコメンド機能)への露出強化につながります。そのような点を鑑みると、細かいKPIを負いすぎることで視点が狭くなりすぎる恐れがあります。
あくまで目的は「Amazon売上最大化」です。
以下はキャンペーンごと広告経由売上とAmazon内売上(広告+オーガニック)ですが、赤のCPNとの相関が強いです。つまり「赤のキャンペーンの広告経由売上が上がれば、Amazon内売上が上がる」ということになります。
次に、この赤のキャンペーンはどの程度まで予算を上げるべきか?という点です。
つまり、「広告投資の閾値はどこか?」という点ですが、これは過去データを見ながら模索していく形になります。まずは上記の通りデータを整理し、そこから都度状況を見ながら調整していくことで、最重要なキャンペーンの投資額の目安が決まります。
軸さえ決まれば、その他のKWについては可能な限り効率を高めるや目的に沿った運用を行うことで、「Amazon内売上」に視点を置いた運用ができます。
4.ビッグセールでの運用が正しいかわからない
まず、プライムデーやブラックフライデー、プライム感謝祭のようなビッグセールは、通常月とは別に考える必要があります。ビッグセール月はただ予算を増える月と考えている場合は次のビッグセールからしっかりと「日予算」「ビッグセールにおける運用方針」を毎回、代理店に依頼しましょう。Amazonのビッグセールはそれほどの価値があります。
私が担当しているブランドでは、毎回以下のような提案を行い、クライアント担当者&Amazonの担当者とすり合わせながらブラッシュアップしセールに臨んています。
❶セール時の運用方針
❷セール前までの準備
❸セール時の入札強化タイミング(日×時間)
❹メニューごとの役割
❺日×キャンペーンごとの日予算(セール実施月)
特に❺については、Amazonの情報リリースタイミング、TVCM開始時も含め実施月に日予算を立てて運用することでセール前からセールまで露出最大化のプランを立てています。
詳細のプランを立てることで、「何が正しく」「何が改善点か」という点が明らかになり次のビッグセール時の広告運用精度を高めることが可能です。
重ねてになりますが、ここまで頭と時間を使うほどAmazonのビッグセールは価値があります。
5.スポンサーブランドの効率が悪すぎる
一般的に「スポンサーブランド」より「スポンサープロダクト」の方がROASがいいため、広告費をスポンサープロダクトに寄せるという提案を受けたケースがあると思います。私も少し前まで同様の認識でしたが、実は直近スポンサーブランドのほうがROASがよくなるという現象が起きてます。
まず、スポンサーブランドのROASが悪化する理由ですが、基本的には「CPC」が高騰してしまうという点が考えられます。CPCの高騰は「在庫」「入札」「CTR」が影響しており、スポンサープロダクトより配信面が少ない傾向にあるスポンサーブランドはどうしても入札が激化して、CPC高騰→ROAS悪化につながってしまうケースがあります。
しかし、一時的なCPC高騰を我慢して配信を継続、上部掲載を取り続けた結果、CPCがかなり抑えられてROASがスポンサープロダクト以上になりました。
以下はビッグワードに対してのスポンサーブランド「CPC」「検索結果上部のIS」の相関図です。
スポンサーブランドは基本はCPC課金となるため、「クリックされる」とAmazon側の売上になるため、よりCTRの高いクリエイティブが優先的=CPCを抑えて配信できることになります。そしてCTRについてはブラックボックスですが、おそらく直近14-30日の数字を見ていると考えられます。また、CTRは検索結果上部が圧倒的に高いです。
つまり、一時的にCPCが高騰しても、検索結果上部へ配信を継続することで、CTRが他ブランドより高まり、CPCが安価になり、ROASが改善されるという流れです。
私が支援しているブランドはビッグワードが圧倒的な検索ボリュームとなっており、スポンサープロダクトも上位掲載を獲得するにはCPCの高騰を覚悟する必要があります。しかし、スポンサーブランドの運用が好調のため、現在実施中のブラックフライデーでも安価なCPCでビッグワードの上位掲載が継続され、CTRが上がり、好調に推移しています。ここから競合がスポンサーブランドの上位掲載を獲得する場合、かなりの費用とCPCの高騰を覚悟する必要があるため、現時点で大きなアドバンテージを得ていると言っても過言ではないでしょう。
いかがだったでしょうか?今回は「Amazon広告の悩み5選」について述べていきました。もし現在のパートナーに疑問や不満がある場合は「目的」や「視点」を共通にしていただければと思います。もしそれで改善されない場合は、ぜひ一度、弊社にご相談くださいませ。